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第613話

パリは一年間も命を削る場所だった。もう、この街にはうんざりだ。

私は彼の腕から身をすくめて離れる。

「大丈夫…家に帰りたい…今すぐ」冷たく感情のない声で言う。クローゼットに向かってスーツケースを引っ張り出す。彼は頑固にあごを突き出し、決然とした様子で私を見つめながら、彼らしくない敗北的な態度でベッドの端にどさりと座る。

「今日はダメだ…俺は寝て、食べて、頭を整理する必要がある。お前もこのことを受け入れて休む必要がある。荷造りしたいならしてもいいが、俺が自分でお前を病院に連れて行くまで、どこにも行かないぞ、ソフス」

「ダメ!」恐怖と怒りで彼に向かって振り返る。なぜそんな感情が前面に出てく...