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第657話マタイが現れる

青年はあたりを見回したが、誰の姿も見えなかった。だが、神識を通じて自分に声を届けられる人物が、トップクラスの達人であることは重々承知していた!

「奴らを騒がせる恐れがなければ、貴様はとっくに死体になっていた。自ら立ち去るか、それとも俺に追い払わせるか?」

その瞬間、緑地帯の大きな木の下に中年の男が姿を現し、冷ややかな眼差しで彼を見つめていた。

「だ……誰だ、貴様は?」

青年は中年の男から何の気配も感じ取れず、その表情はますます険しくなっていく。

相手の力量を見通せないということは、その実力が自分を遥かに凌駕しているに他ならない! 門派の最高幹部数名と対峙した時にしか、このような感覚を...