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第172章

イッカーは王室の執務室に入った。空気は緊張感に包まれ、その雰囲気は刃物で切れるほどだった。彼の父親であるアラリック王は威厳のある机に座り、その表情は厳しさと辛うじて抑えられた怒りが入り混じっていた。傍らには腕を組んだイザベラ王妃が立ち、珍しく失望の表情を浮かべていた。ザイアは部屋の奥の壁にもたれかかり、いつもの皮肉な笑みはなく、静かに様子を窺っていた。

「何が起きているんだ?」イッカーは注意深い口調で尋ね、視線を彼らの間で行き来させた。

父親の声が轟いた。「アリナ王女に何をした?」

イッカーは身体を強張らせた。「彼女に何もしていない」

「なぜ彼女を拒絶したの?」イザベラが鋭いが優しさの...