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第155章

イッカルは部屋の中を行ったり来たりしていた。厚手のベルベットのカーテンが引かれ、夕日が部屋に差し込んでいた。オレンジ色の光が部屋を暖かく照らしていたが、彼の心は穏やかとは程遠かった。誕生日の舞踏会から数週間が経っていたが、花火の滝の下で一人佇むタリアの姿、驚きに満ちた彼女の表情が、まるで羊皮紙にインクが染み込むように彼の思考に刻み込まれていた。タリア、母の新しい侍女。タリア、王太子の目には本来なら見えないはずの存在。それなのに、彼女は見えていた。

ドアをノックする音に彼は驚いた。スケッチブックを机の上の書類の山の下に滑り込ませ、名付けられないほど強い秘密の罪悪感で心臓が高鳴った。このような考...