「私から全てを奪った」彼女は囁くように言った。その声は息のように微かだった。「私の王国も、父上も、自由も。いったい、何を望むというの？」

竜王は面白そうに、そして好奇心に満ちた眼差しで彼女を見つめ、皮肉な笑みを浮かべた。「全てだ」彼は端的に答えた。「私の正当な権利である全てを望む。お前もその一つだ」

「陛下は私をどうなさるおつもりですか？」彼女の声は僅かに震えていたが、敢えて反抗的な調子を込めて問いかけた。

アラリックは玉座から立ち上がった。その動きは獲物を狙う捕食者のように、流れるような計算された仕草だった。「私に仕えるのだ」彼の声は威厳に満ちて広間に響き渡った。「側女として子を産め。それが済んだら死ねばいい」

強大な竜王アラリックによってアレンドール王国が征服された後、王女イザベラは彼の後宮へと連れて来られ、数多の側女の一人として仕えることとなった。王は彼女に対して冷酷無比で、敵の娘であるという理由だけで懲らしめた。イザベラは王を恐れていた。それは当然のことで、できることなら王を避けて生き延びることだけを願っていた。しかし、二人を引き寄せる何か強い力が芽生え始めると、王女の純真な無垢と王の冷たい心は、恐れと欲望という危険な舞踏の中で出会うこととなる。


ドラゴン王の妾

宮殿の廊下は、盛大な行事の時だけ感じられるエネルギーで活気づいていた。竜の紋章で飾られた黒と深紅の旗が高い天井から垂れ下がり、祝祭の期待感で空気は重く満ちていた。イッカルは自室の窓辺に立ち、下の中庭での準備の様子を眺めていた。召使いたちが行き来しながらテーブルやランタンを設置し、音楽家たちが楽器の調律をしていた。その音色は、これから訪れる夜の予兆のように彼の元へと漂ってきた。
ドアをノックする音が彼を思考から引き戻した。それは母親のイザベラ女王で、呼吸をするのと同じくらい自然な優雅さで部屋に入ってきた。彼女は深い赤ワイン色のドレスを身にまとい、炎のように輝く金糸で刺繍が施されていた。
「十...

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