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第956話カニンガム一家は今、嵐の目の前にいる

ヴィンセントはセレーネを無視して車を走らせた。

バックミラーには、信じられないといった表情で携帯電話の画面に表示された金額を数えている彼女の姿がまだ映っていた。

ヴィンセントは彼女を面白い女だと思い、苦笑した。

その笑みも、リリーからの再度の着信で瞬く間に消えた。

「ヴィンセント、どこにいたの? 昨日の夜、どうして電話に出なかったの?」リリーが不安そうに尋ねた。

「セラピストに会って、その近くに泊まっていた」ヴィンセントは冷ややかに答えた。

リリーの手の者が常に自分を監視しているのだから、嘘をついても無駄だった。

「携帯は車の中に置きっぱなしだったから、メッセージには気づかなかっ...