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第326章

傷を負ったままの顔の端に血の痕を残すメイソンは、もはや自分の怪我に構っている余裕はなかった。彼の頭の中にあるのはただ一つ、セイディをできるだけ早く連れ出すことだけだった。

ココを胸に抱きかかえたセイディは、まだショックから立ち直れず、重い息をついていた。

バックミラーを見ると、クレメンス家のボディガードが遠ざかっていくのが見えた。一瞬、追っ手から解放された安堵を感じたが、彼女の心に喜びや解放感はなく、ただ不安が募るばかりだった。

まるで恐ろしい過ちを犯したかのような、消えない不安が彼女につきまとっていた。

「怖がらなくていいよ」メイソンは優しく彼女を慰めた。「もう安全だから!」

「子...