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第1609話クレメンス氏の覚醒

「まだ、何の連絡もない……」

サディは、トリスタンが今とても彼女を助けられる状態ではないことを、どうライアンに伝えればいいか分からなかった。こんな肝心な時に、彼の邪魔をする気にはなれなかったのだ。

ライアンは深くため息をついた。「俺、パニックになって君に連絡しろって急かし続けたけど、今思えば、彼もきっと手一杯なんだろうな」

「ええ」とサディは無力感を覚えながら言った。「でも、何とかしてみせるわ」

ライアンの声は打ち負かされたようだった。「相手はプロだ。一手一手が的確すぎる。俺たちじゃ歯が立たない。本物のクレメンス氏が戻ってこない限り、俺たちはもうおしまいだ」

「何か方法があるはずよ」...