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第83話

彼の姿を見て、私の唇がわずかに開いた。

彼が身にまとった漆黒のタキシードと下に着た白いシャツは、彼の幅広く力強い上半身にぴったりと馴染んでいた。黒いパンツに艶やかな黒い靴、そして私のドレスに合わせたピンク色のポケットチーフが、彼の装いを完成させていた。濃い髪を綺麗に後ろに撫でつけ、顎はきれいに剃られていた。私の手は彼に触れたくてうずいた。

なんてこと!

息を呑むため息が私の唇から漏れた。目の前のギリシャの神のような姿から視線を外すことができなかった。

彼は...罪深いほど美しかった。

私の哀れな心臓は彼の前では正常に鼓動することさえ難しかった。

そして彼の特有の魅惑的な香水の香りが...