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第58話
バルコニーの引き戸を開け、私は冷たい夕方の空気の中に足を踏み出した。そよ風が肌に触れると、鳥肌が腕を這い上がった。
彼はそこに立っていた。手すりを握りしめる拳、夕陽に染まった地平線に向けられた虚ろな目。でも私には分かっていた、この瞬間、彼の心に夕暮れの美しさなど最後に浮かぶものではないことが。
後ろから彼の胴体に腕を回し、肩甲骨にキスをした。深いため息をついた彼は、私の抱擁の中で緊張をほぐした。
「彼女は行った?」
私は彼の背中に頭を寄せながら頷いた。「大丈夫?」
彼は私の手を取り、手のひらにキスをした。「君がここにいるなら、大丈夫になる」
彼の前に移動し、胸に身を寄せると、彼の腕...