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第18話

匿名視点

彼はグラスの縁に触れ、ゆっくりと一口飲みながら、指でアルバムのページをめくった。かつての人生に満ちていた喜びがすべて刻まれているアルバム。

彼の目は、すり切れた写真の中の笑顔に触れた。かつて彼に平和と幸せをもたらした顔々。彼の家族の写真。

小さな笑みが彼の唇の端に浮かんだ。彼の指は彼女の柔らかな表情、小柄な姿をなぞった。彼女はカメラに向かって微笑み、彼の腕は守るように彼女の腰に回されていた。

彼はまだあの写真を撮った日のことを覚えていた。クリスマスの時だった。

彼女と過ごしたあの日はなんて美しかったことか…

そして現実が彼を襲い、顔から笑顔を消し去った。彼の顎は引き締まり...