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第584話真実、全部聞いた

「ええ……本当にジャレッドなのよ」

暗闇でその名を耳にしたグレースとゼイヴィアは、少しも驚かなかった。

案の定、グレースにはわかっていたのだ。あの温厚で洗練された、素晴らしい善人という評判のすべてが、ジャレッドの芝居だったのだと。

パトリックの一件で懲りて以来、グレースはもはや自分の第一感を信用しなくなっていた。悪賢い人間ほど自分を偽るのがうまく、極めて善良な人物を装うものだ。その実、根は腐りきっているというのに。

パトリックがそうだったし、ジャレッドもそうなのだ!

それに、彼は自分がグレースの父親だと主張し、父親になろうとしていた。それなのに、母の死が実際には彼と関係していたなんて!...