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第673話私はルールを守る善良な人です

ベンジャミンの唇が笑みの形に歪み、その軽い口調にはからかいの色が滲んでいた。「恋敵同士が憎み合うのは普通のことだが、俺は君を憎んでいない」

「なぜだ?」チャールズは彼がとぼけているのだと思った。

「妻がいるからだ」とベンジャミンは言い切った。

チャールズは衝動に駆られた。ずっとやりたかったが、一度も実行に移したことのないことだ。「新年が明けたら日時を決めて、一度手合わせ願おうか」

「不適切だな」ベンジャミンは拒否した。「フェアじゃない」

ベンジャミンは元プロだ。軍を退役して長年経つが、体に染みついたものはそう簡単には抜けない。チャールズと本気でやり合えば、いじめにしかならないだろう。...