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60話

キスは深まっていった。急ぐことなく、お互いのペースで探り合い、味わい合う。彼の唇が離れると、彼は親指で私の顔を撫でた。

「これから逃げるのはやめろ」

「その話を始める前に、ちょっと時間をくれない?」と私は言った。

まだ頭がはっきりしていなかった。彼の胸を押して、彼の体と壁の間のスペースから抜け出した。

そのとき初めて、周りの豪華なブドワール風のスイートルームに気づいた。柔らかな照明、クリーム色の壁、深い茶色と赤の家具。一角には巨大なベッドがあり、部屋の中央には丸テーブルが置かれていた。バスルームを探して辺りを見回した。

「右側だ」と彼は私の後ろで言った。私はドレスを取ろうと身を屈めた...