2話
エマの視点：
「ダメ！」私は思わず叫んで、すぐに身を引いた。
危なかった！
突然、私はバーで見知らぬ人にキスしようとしていたことに気づいた。何を考えていたんだろう？こんなことするべきじゃない！ザックと一緒にいるべきなのに！
あの二杯目のビールが悪かったんだ。
その間、彼は困惑した表情で私を見ていた。彼もまたダンスで息を切らしていた。彼の目に浮かんだ表情から、怒っているのか失望しているのか、あるいはその両方なのか、判断できなかった。
「ごめんなさい。行かなきゃ」私はそう言って、できるだけ早くかかとを返した。
「おい—」彼が何度か私を呼ぶ声が聞こえたが、振り返りたくなかった。
ティフがスティーブと熱い雰囲気になっているのを見かけたが、邪魔したくなかったので、そっとしておいた。キャリーはまだソロリティの女子たちと一緒にいたので、わきに引っ張って、私の計画を手短に伝えた。
「キャリー、ねえ」
「あら、エム、どこにいたの？」
「ダンスしてたの…でも聞いて、私、もう行くわ。ザックの寮の部屋で待つつもり。彼すぐ帰ってくるって言ってたから」音楽がとても大きかったので、彼女の耳元で叫ばなければならなかった。
「わかった！私たちのこと心配しないで。ウーバー呼んでモーテルに泊まるから。彼女のこと見ておくわ」キャリーはティフのことを指していた。
「わかった、朝に会おう」別れる前に彼女をハグした。
「楽しんで！気をつけてね！」私が離れていく時、彼女が音楽越しに叫ぶ声が聞こえた。
大学の寮はエモリー・キャンパスの郊外にある大きな男女共学の建物だった。今夜は、オリエンテーションを終えたばかりの酔っぱらった大学一年生でいっぱいだった。玄関で絡んできた酔っぱらった男をやんわり断った後、私は建物の中に入った。
みんな私を学生だと思い込んでいたので、入るのに問題はなかった。二階への階段を上りながら、私の心臓は興奮で高鳴っていた。廊下に沿って223号室、ザックの部屋を探した。番号が近づくにつれて、私の心臓はますます速く鼓動した。
220…221…222…
「223」彼氏のドアの前に立ち、私は小さく呟いた。
彼のルームメイトが不在であることを願った。ザックはもうすぐ帰ってくるはずだから、ベッドに座って彼を待とうと思った。
手でドアノブに触れると、ドアが開いていることに気づいた。喜んでノブを下げ、ドアを押し開けた。しかし部屋の中の光景を見た瞬間、私の笑顔は崩れ落ちた。目の前で起きていることを見る心の準備はできていなかった。決してできるはずがなかった。
ザックは裸でベッドに横たわっていた。彼の前には、同じく裸の女の子がいた。彼女はベッドの上で彼にまたがっていたので、私には彼女の髪と裸の背中しか見えなかった。彼女は彼の名前を大声で喘ぎながら、上下に動いていた。彼の片手は彼女の裸の尻をしっかりと掴み、彼女が上下に弾むたびに強く握っていた。もう一方の手は彼女の裸の胸を掴み、うめき声を上げながらもみしだいていた。
私の顎が落ち、どれだけ閉じたくても目を閉じることができなかった。この光景は永遠に私の記憶に刻まれるだろう。そして突然、肺から空気が抜け、呼吸ができなくなった。
「ちょっと待って—エマ？！」目の端でようやく私がドアの前に立っていることに気づいたザック。
彼は女の子を横に押しやると、彼女は「痛い！」と悲鳴を上げた。
彼は床から慌ててズボンを拾い、よろめきながら私に近づいてきた。女の子は振り向いて私を見たが、驚いた様子はなかった。彼女はただ毛布を引っ張って胸を隠し、それから醜い悪魔のような笑みを私に向けた。
「エマ？なんでここにいるんだ」ザックは息も絶え絶えに言った。
彼はまだ息を切らし、汗をかき、嫌な性の匂いを漂わせていた。私はそれが大嫌いだった。内臓を吐き出したいと思った。
「どうして…」私の声は割れた。目には涙が溢れていた。
「説明できるよ…」彼はドアの外に出て、私たちの後ろでドアを閉めながらどもった。
「じゃあ、説明してよ」私は要求した。
「なんでもないんだ、わかるだろ？ジェンナと僕は—ただ肉体関係だけで—」彼は話し始めたが、私は聞きたくなかった。
思わず手が彼の顔に飛び、彼の話を止めるために頬を強く叩いた。彼は驚いた様子で、私も自分がこんな暴力的な人間だとは思っていなかった。彼の目はゆっくりと驚きから怒りへと変わった。
「俺はどうすればよかったんだ、エマ？お前は俺とセックスしたくなかったじゃないか！」彼は怒鳴った。
「私はまだ準備ができてなかったのよ、ザック。あなたは待つって言ったじゃない」私は彼に思い出させた。
「もう一年だぞ。あとどれだけ待てばよかったんだ？」
「だから大人のように私に話す代わりに、背中から刺すようなことをしたの？」
私は彼の急所を突いたことがわかった。彼は黙った。言い訳はできなかった。
「どれくらい？」涙を流しながら私は尋ねた。
「夏中ずっと…」彼は小声で言った。
夏中ずっと？つまりこれが初めてじゃないということ…
私は震えながら一歩後ろに下がり、顔から涙を拭った。彼は私に近づこうとしたが、私は手を出して彼を止めた。
「触らないで」私は警告した。
「エマ、ベイビー。それでも俺はお前を愛してるんだ、本当に。彼女とはただのセックスだけだよ、わかるだろ？でもお前とは—」
「やめて！もういい！」
もし彼がこんなことを言って状況を良くしていると思っているなら、間違っていた。
「エマ、愛してる」彼は再び言った。
彼は私に手を伸ばそうとしたが、私は彼を乱暴に押しのけた。彼はよろめいた。
「くたばれ」私は吐き捨てるように言って、かかとを返して立ち去った。
私はできるだけ早くそこから逃げ出した。
車で急いで離れる間、胸の中の痛みが私を苦しめるのを感じた。ザックは何度も私に電話をかけてきたが、私は彼の番号をブロックした。二度と彼の声を聞きたくなかったし、顔も見たくなかった。永遠に。
ティフとキャリーがどこにいるのか確認するために電話したが、二人とも出なかった。彼女たちがまだそこにいるかもしれないと思い、バーに戻ることにした。すべての隅々と女子トイレを再確認したが、彼女たちはどこにもいなかった。
「ねえ、どこにいるの？ひどいことがあったの。折り返し電話して」私は電話に向かって言い、二人の電話にメッセージを残した。
私はぼんやりとバーに向かい、スツールの一つに座った。疲れていた。傷ついて孤独だった。目を閉じるたびに、ザックとあの女の子の映像が頭に浮かんできた。脳みそを削り取りたかった。
長い一日で、ただ終わらせたかった。
「飲み物が必要そうだね」突然、見覚えのある声が私に話しかけた。
横を向くと、あの男—以前一緒に踊った、とても魅力的な男性がいた。彼はバーにカジュアルにもたれかかっていた。話す気分ではなかったので、彼を無視して前を向き直した。
「大変な夜？」彼はまた話しかけた。
私は返事をせず、彼がヒントを得て去るだろうと思った。しかし彼は去らなかった。代わりに、バーテンダーを呼んでいた。
「ジントニックを一つ、この女性に」彼はカウンターにお金を置きながら言った。バーテンダーはうなずき、ドリンクを作り始めた。
「役に立つかもしれないよ」彼は簡潔に私に言った。
彼は返事を待っていなかった。最後に一度だけ微笑んで、歩き去ろうとした。彼が去っていくのを見て安心すべきだと思った。しかし奇妙なことに、彼に行ってほしくないと感じた。
バーテンダーは私の前に氷とライムのスライス、透明な液体が入った背の高いグラスを置いた。何に取り憑かれたのか分からないが、突然声を出したくなった。
「ねえ、待って」私は彼に言った。
彼は足を止めて振り返り、私が続けるのを待った。
私はドリンクを手に取り、一気に飲み干した。アルコールが喉を焼いたが、気にしなかった。その灼熱感は今感じているどんな感情よりもましだった。彼は私が空のグラスをバーに戻すのを、目を丸くして見ていた。
「ここから出ない？」私はまた言った。
「どこへ？」彼は尋ねた。
「あなたと？どこでも」
私の心は砕け、頭は真っ白だった。今の私には体と胸の中の灼熱感しかなかった。
彼が立ち止まったまま、私は彼に近づいた。腕を伸ばせば届く距離で止まった。私は彼を見て、彼も私を見返した。私が下唇を噛み、頭を少し傾けて彼の返事を待っている間、彼は私の顔を研究していた。
私たち二人の間に一瞬の沈黙があった。そして突然、彼は前に進み出て、手を私の顔に伸ばした。彼は私の顎を上げ、身をかがめると、荒々しく私の唇に口づけた。
その衝撃で胸の中の炎はさらに大きく燃え上がった。私は彼の首に腕を回し、彼を引き寄せた。彼はより切迫した様子で私にキスし、大きな手で私の首を掴み、私も彼にキスを返した。彼の魅惑的な男性の香りが私の鼻を包み、さらに酔いしれた。
彼の唇は私のものを貪り、彼はアルコールとミントの味がした。彼は絶対に素晴らしいキスの達人で、もっと欲しくなるちょうどいい加減を心得ていた。彼の舌が私の唇をなぞり、入る道を探しているのを感じた時、私の息は止まった。私はそれに従い、口を少し開いた。彼はその機会を逃さず、舌を突き入れた。私たちの舌が出会い、情熱的に踊り始め、私は小さな声を漏らした。
彼の手が私の背中を下りて尻で止まると、私は彼のシャツをきつく握った。彼は熱烈に私の後ろ側を掴み、前側を彼のズボンに強く押し付けた。彼は低くうなり、私の太ももの上部を使って彼の硬くなっている股間をこすった。
ああ！濡れてきてるのを感じた。
そして突然、彼は離れ、キスを中断した。私の目は驚きで開き、息を切らしていた。彼は歯を食いしばり、深い茶色の目で私の目を見つめた。ゆっくりと彼は前に身を乗り出し、口が私の左耳に触れるまで近づき、かすれた声で私の肌に囁いた。
「一緒に来て」
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- 続く - - -
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