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第690話エイブリーの譲歩 1

トバイアスは単刀直入に切り出した。「前回お会いした時、あなたに惹かれました、ペンローズさん。関係を先に進めたい。もし我々が結婚すれば、私の財産があなたの会社を支え、あなた自身も既婚者という立場になる。そうなれば、娘さんの親権を勝ち取るのはずっと容易になるでしょう」

イサドラは一瞬、誘惑を感じた。

彼女はトバイアスが好きではなかった。実際、少し前まで二人はビジネスのライバルだったのだ。

しかし、エイヴリーとの一件で完膚なきまでに打ちのめされた今、彼女にはもう切れるカードがなかった。マギーを手元に置いておきたいのなら、トバイアスは戦略的な選択肢だった。

それでも、ためらいはあった。彼に心を...