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第552話セロン：私はニコールの夫です

セロンは車窓からレストランの名前を眺めていた。以前ここで食事をしたことがあるような漠然とした記憶があったが、賢い男ならそんなことを妻に話したりはしないものだ。

車が停まると、彼はニコールに目をやり、その瞳に涙が浮かんでいるのに気づいた。

「この場所に何か特別な思い出が？」セロンの声は理解を示すように和らいだ。

ニコールは頷き、ドアの取っ手に手をかけたままためらった。セロンの真剣な眼差しを受け、彼が車を降りる気配がないことを察すると、彼女は思わず囁くように口を開いた。「小さい頃、父がよく私をここに連れてきて、母を待っていたの」

彼らが待ち続けたのは、四年間だった。

その歳月はニコールの...