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第550章理性を失う

ジェイコブは車に崩れるように乗り込んだ。しばらく物思いに沈んでいたが、やがてセンターコンソールに置かれた煙草の箱に手を伸ばした。指が震える。一本に火をつけると、薄青い煙が視界をぼやかし、ニコルとの記憶――共に過ごした過去、彼女が結婚したという厳しい現実、そして最後の、打ちのめされるような言葉――が心を曇らせた。「ジェイコブ、私、結婚してるの」

そう、彼女は結婚している。ジェイコブはプライドを完全に捨て、彼女を取り戻せるならその事実さえも受け入れる覚悟だった。だが、彼女は彼を望まなかった――戻ることを拒んだのだ。彼女が自ら戻ってこないのなら、なぜこの哀れな追いかけっこを続ける必要がある？　残さ...