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第542話ウィザード・ハーツ (1)

「あなたには関係のないことでしょう」ニコールは視線を落とし、彼と目を合わせようとはしなかった。長年の歳月を経て、彼女の声は成熟した女性的な響きを帯び、落ち着き払った口調で続けた。「私にはもう執着する価値がないと決めたのは、あなたの方ではなかったかしら? まるで無価値なもののように捨てられた者がいるとすれば、それは私――あなたじゃない」

彼女は冷ややかに付け加えた。「ええ、先に去ったのは私よ。でも、なぜ私が去らなければならなかったの?」

彼を遠ざけたのは、彼の無頓着さと無関心だった。

まだ若く、世間知らずだった二十代の頃、彼はこう約束した。「ニコール、どこへ行くにも君を連れていく。決して離...