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第512話エルズペス:ニコラスの娘3

ニコラスは夜通し車を走らせ、オーシャンクレスト市へと向かった。

細雪が空に舞う、深い冬の夜。彼は愛車でその道のりを進んだ。世界を包む暗闇の中で、彼の耳に響くのはアザレアの声だけだった。「ムーア様、愛しています」

外は雪が世界を白く覆っていた。車内では、暖房もつけていなかった。冬の夜の厳しい寒さの中、ニコラスはシャツ一枚だけだった。体は寒さで痺れていたが、それは心の痛みに比べれば何でもなかった。

彼はアザレアに対する自分の気持ちが分からなかった。これまで深く考えたこともなかったのだ。彼の人生において、その愛憎は常に他者へと向けられていた。だが今、あの言葉――「ムーア様、愛しています」――が...