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第507話アザレア失恋

個室は静まり返った。

ニコラスも彼女の方を向いた。視線が交錯し、女の目には涙が光っていた。恋人が自分を裏切り、皆の前で恥をかかせるためだけにこんな場面を画策するなんて、信じられなかったのだ。

アザレアの唇は抑えきれずに震えた。「なぜ」という問いは決して口にしなかった――尋ねれば、さらなる屈辱を招くだけだ。彼女は一歩下がり、静かに言った。「申し訳ありません、部屋を間違えました」

シャープ家の人々は不安げに顔を見合わせた。ヘスティアはもはやじっと座ってはいられなかった。ほんの二日前、アザレアに近づかないよう警告したばかりなのに、またしてもここに現れ、夫を誘惑し、正妻である自分の――しかも両親...