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21話

ルー

バルコニーからホールに戻ると、温かい光に目が眩み、何度か瞬きをした。ドアに向かう前に、緊張したトラビスの背中を最後にもう一度見つめた。今夜は最悪だった。温かい湯船と頭を空っぽにするテレビだけが恋しかった。入り口まで半分ほど歩いたとき、クラッチバッグがまだテーブルに置きっぱなしだったことを思い出した。アルファ・ジョンから逃げる際に持ってくるのを忘れたことを心の中で自分を叱った。バッグを置いたままにするかどうか、頭を少し左右に振りながら、メリットとデメリットを考えた。決め手となったのは、クラッチバッグに財布が入っていて、新しいIDやカードを作る手間が、再びトラビスに会う可能性よりも...