4話
この女性の「代役」として何年も過ごした後、奇妙な恥ずかしさが私の中を流れた。タラが歩み寄り、優しく微笑んだ。
「あなたはCEOオフィスのアシスタントよね？タヤだったかしら？」私は激しく鼓動する心臓を落ち着かせようと、頭を下げて頷いた。
「はい、そうです、ソーリンさん。初めまして、タヤです」
タラは腕時計で時間を確認した。
「30分後に役員会議を開くわ。コーヒーを入れて私のオフィスに持ってきてくれる？少し元気づけが必要なの」
私は少し躊躇した。結局のところ、グリフォンがまだそこにいたから。
でも、まだ辞表を出していなかったので、タラに言われたことは何でもしなければならなかった。
ブリエルに頼んでコーヒーを持っていってもらおうと思いながら、頷くしかなかった。
「ありがとう」
タラは頭を高く上げて歩き去った。自信に満ちた強い女狼の教科書通りの姿だった。
彼女の自信と輝きは、私との鮮明な対比をなしていた。
私は偽物のタラだった。
役立たず、本物が手に入れば捨てられるもの。
しばらくの間、私はそこに動かずに立っていたが、やがて我に返り、トイレを出て休憩室へ真っ直ぐ向かった。
コーヒーを入れ、他の誰かにタラのオフィスへ持っていってもらおうと頼みに行った。
しかし、彼らはすでに他の仕事を任されていたので、私自身が届けなければならなかった。おずおずとオフィスのドアをノックした。
「どうぞ」タラの優しい声が中から聞こえた。
深呼吸をした後、私は勇気を振り絞って入室した。
ドアを開けると、タラがグリフォンの膝の上に座っているのが見えた。
グリフォンを見ることは覚悟していたが、こんな光景は予想していなかった。私の手は震え、床一面にコーヒーをこぼさないように必死だった。
二人に私の動揺が気づかれないよう恐れ、すぐに視線を下げ、何も問題ないふりをした。「ソーリンさん、コーヒーをお持ちしました」
「そこに置いておいて、ありがとう」頷きながら、私はコーヒーをタラのデスクに置き、それから歩き出した。
その間ずっと、一度もグリフォンを見ないようにした。
オフィスを出た後、私の足はがくがくと震えた。
バランスを取り戻すために壁に寄りかかった。
タラが彼の膝の上にあんなにも心地よさそうに座っている様子...それは、グリフォンが同じように私を膝の上に引き寄せていたことを思い出させた。セックスをするときも彼はそのように私を位置させていた。
グリフォンとタラは露骨なことは何もしていなかったが、私の頭の中は彼らが以前一緒にいた姿、うめき声を上げ、体を擦り合わせ、愛し合う姿でいっぱいになった。
グリフォンが膝の上に座るタラの体に触れる手を想像した。それはグリフォンが最初に私に触れたのと同じ方法だった。いや...それは違う。
最初にグリフォンが触れたのは私ではなかった。
彼は間違いなく、私が現れるずっと前から、タラとその体勢で、そしてもっと多くの体勢で愛を交わしていたのだ。なぜなら私は単なる彼の代替の恋人だったから。
私は胸に拳を押し当て、心拍を落ち着かせようとした。弱い人間の心臓が止まってしまうのではないかと恐れながら。
私は必死に自分のデスクに戻り、できるだけ早く辞めたいと思った。
毎日、目の前で二人が幸せそうに愛し合っているのを見るなんて耐えられなかった。
私の残りわずかな地球での日々を、それを見ることに費やすつもりはなかった。
オフィスの皆の前でグリフォンに近づき、泣きながら「なぜ私があなたを愛しているように、あなたは私を愛せないのか」と尋ねてしまうのではないかとさえ恐れていた。
辞表を書き終えた後、ライラに承認してもらうよう頼みに行った。
ライラは私のことを本当に好きではなかった。
彼女は私を引き留めようとあまり頑張らず、数言葉を言っただけで辞表を承認することに同意した。
全過程は一ヶ月かかり、すぐには辞められないので、まず二週間の年次休暇を取らなければならなかった。
私はミッドウェスト・パックス協会で5年間働き、持っていた年次休暇は15日間だった。
辞める前に休暇を取るのは理にかなっていた。
私が急いでいるのを見て、ライラは思わず目を転がした。
「休暇は承認できるけど、それが終わったらすぐに戻ってきて、最終日までの仕事を終わらせなさい」
「わかりました」と私は答えた。そして、バッグを持って出て行った。
会社から急いで出ると、スターク・パックのベータ、ローマン・スタークが見えた。
彼はアルカディアでよく知られたクリープで、女性を弄ぶのが大好きだった—女性側が望んでいるかどうかに関わらず。
狼のような笑みを浮かべて私の方に歩いてくるのを見て怖くなり、すぐに向きを変えた。
しかしローマンの方が早かった。
彼は私の手を掴み、腕の中に引き寄せた。「そんなに急いでどこに行くんだい、ベイビー？」
彼は頭を下げ、私の耳に近づき、そっと息を吹きかけた。
耳元の彼の温かい息が鳥肌を立たせ、私は嫌悪感で震えた。
公衆の場でベータに抵抗することの結果を考える前に、必死でローマンを押しのけたが、彼は私の腰をしっかりと掴んでいた。
「君はとてもいい匂いがする...」彼は私の髪に鼻を押し当て、深く吸い込み、手は上へと移動して私の胸へと向かった。グリフォンはいつも私が自分自身の匂いが全くしないことを望んでいたが、ローマンの狼は反対だった。ローマンがこんなにクリープでなかったら、私を惹きつけるために何か別のものにしようとしていないことを、実際に評価したかもしれない。
私は彼の手を押さえつけ、「スタークベータ、お行儀よくしてください」と息を吐いた。
「お行儀？なぜそうする必要がある？それではアルファである目的が台無しになる」ローマンはいたずらっぽく言い、私の耳たぶを噛んだ。
ローマンは見た目は地味で、ミッドウェスト地域の他の無愛想なアルファやベータたちとは何も似ていなかったが、彼ははるかに悪かった。
私は頭を回し、嫌悪感を目に浮かべて彼を見た。
しかしローマンは気にしなかった。
実際、それは彼をさらに興奮させた。
女性が抵抗すればするほど、彼の狼はその女性を征服したくなった。
そして、私がこれほど彼に抵抗することで、彼はさらに興奮した。
これはベータ・スタークについて誰もが知っていることだった。
もっとも、私には彼の爪一振りで殺されかねないにもかかわらず、ベータの支配に屈服する狼がいなかったことが、彼にノーと言うのを容易にしていたのかもしれない。
ローマンは片手で私の顎を持ち上げ、指で頬を撫で、爪をわずかに出した。
「スタークベータ、お願いです。私たちはほとんど知り合いでもありません」私は頭を下げ、彼の接触から身を引いた。ローマンは一ヶ月前、私がスターク・パックに書類を届けに行ったときに初めて私を標的にした。それ以来、彼はしばしばビジネスを装って、ミッドウェスト・パックス協会オフィスに来ては私を困らせていた。
彼は私に会うたびに、不適切に触れたり、無礼な言葉で私を困らせたりした。私はこの仕事が必要で、狼がいない自分の立場上、アルファやベータをできるだけ満足させる必要があった。ローマンを怒らせる余裕はなく、いつも彼のハラスメントに耐えていた。
しかし今は失うものが何もなくなり、もう彼を恐れてはいなかった。予想外にも、私が冷たく接しても、ローマンは動じなかった。
彼は私の顔をつかんだ。
「親しくないかもしれない」と彼は唸った。「でも、もし私と一晩過ごす誘いを受け入れたら、もっとお互いをよく知ることができるだろう」
彼は粘り強かった、それは認めなければならなかった。
私は彼を押しのけた。
抵抗すればするほど、彼の握りはきつくなった。
彼の爪の先が私の肌に跡を残すだろうと確信した。出血するほどではないが、十分に跡が残るほど強く。
彼は無理やり私の頬にキスをした。
肌に触れる彼の氷のように冷たい唇に、私は吐き気を催しそうになった。
ローマンの顔を殴ろうとした瞬間、私の後ろから声が聞こえた。「グリフォン？」