2話
十八年後
カリフォルニア州サクラメント
トレイは彼女の写真を再び見つめ、ここ数週間すっかり慣れてしまった心臓の高鳴りを感じた。この女性の何がそうさせるのだろう？
最初、彼は任務を引き受けたくなかった。彼は潜入捜査官であり、派手な子守役ではなかったからだ。だが彼女の写真を一目見た途端、すぐに考えを変えた。任務に就きたいだけでなく、主導権を握ることを要求したのだ。
彼が見ていたのは単なる運転免許証の写真だったが、それでも彼女の目に宿る悲しみを感じ取ることができた。トレイは必死にその悲しみを取り除いてあげたいと思った。
彼女に強く惹かれることに恐怖を感じた。それは自分の感情のせいではなく、もし自分の気持ちを打ち明けたら彼女に拒絶されるのではないかという恐れからだった。見知らぬ男が近づいてきて、あなたに夢中だと告げられて、喜ぶ人がいるだろうか？
トレイはウェアライオンだったが、刑事でもあった。上司の警部とその妻を除いて、同僚の誰も彼がウェアライオンであることを知らなかった。他の者たちはシフターや超自然的存在について何も知らなかった。
トレイは自分の力と人助けをしたいという願望を、自分の知る最良の方法で活かすことに決めていた。彼は潜入捜査官として、人身売買の被害に遭った子供たちや若者たちの救出を手伝っていた。トレイのライオンであるアトラスは、彼らの仕事の冒険と悪者を倒すことを楽しんでいた。
アトラスは、トレイが執着している対象が彼らのメイトだと信じていた。ウェアライオンはメイトを見分ける点でウェアウルフとは異なっていた。彼らは匂いで判断することができなかった。それは最初の触れ合いによるものだった。火花が散れば、メイトを見つけたことがわかるのだ。
カテリーナは美しかった。漆黒の長い髪、ふくよかな唇、淡い青い目を持っていた。彼女の肌は磁器のように見える乳白色だった。彼女はとても小柄で、トレイは彼女を守りたいという圧倒的な欲求を感じた。特に彼女の可愛らしい顔に悲しみと恐怖を見たときには。
彼女は監視が簡単だった。なぜなら彼女はほとんど外出しなかったからだ。彼女が最もよく行く場所は、職場とアパートから通りを下った市場だけだった。トレイのチームは保護のために彼女を監視していたが、彼は自分でほとんどの勤務シフトを担当した。チームの他のメンバーを信頼していないわけではなかった。ただ彼女を見守るのは自分でありたかったのだ。
トレイは彼女が店から出てきたとき、ちらりと下を見た。カテリーナは隣の建物に寄りかかっている彼の前を通り過ぎた。彼女が通り過ぎた時、彼は何か花の香りを捉えた。それは特定の花というよりも、暖かい夏の日に牧草地に立ち、多くの花々の香りに包まれているような感覚だった。
その魅力的な香りを放つものは、今や彼のお気に入りの香りとなった。カテリーナは数フィートしか離れていなかったにもかかわらず、彼の方向を見ることはなかった。彼の心臓は胸の中でとても強く鼓動していたので、彼女に聞こえないことが不思議なほどだった。トレイは彼女を追いかける際に注意が必要だった。彼女はいつも誰かに見られていると感じているかのように、周囲を警戒していたからだ。
カテリーナがこれほど用心深いのは良いことだと思ったが、最終的に彼が彼女に近づくことができたとき、彼女が難色を示すのではないかと心配だった。明らかに彼女の人生には男性がいなかったが、カミングス刑事が彼女は誰も近づけないと言っていたことを考えれば、それは驚くことではなかった。トレイは他の男性たちが彼女を賞賛の目で見ているのを見ると、嫉妬の痛みを感じた。しかし、彼女はそれに気づいているようには見えなかった。
カテリーナの表情は、どんな賞賛者も彼女に話しかけようとするのを躊躇させた。彼女は人の目を見るとき、氷のように冷たく見えたが、彼はそこにどこかに隠された優しい一面があることを知っていた。トレイは、彼女が自分を守るために築いた壁を壊すには、彼女が信頼できる誰かが必要だと確信していた。そして彼はその挑戦に立ち向かう準備ができていた。
彼女の後をついて家に向かう途中、カテリーナの長い髪が左右に揺れ、彼を催眠状態にした。彼はその髪に指を通す感触を想像した。
彼は彼女がアパートの建物に入るのを見て、中に続こうかと考えたが、すぐに考えを改めた。彼女がエレベーターに乗ろうとしているところを覗き込むと、彼女は窓の外を見ていた。彼女の目が一瞬彼と合ったとき、彼は凍りついたが、彼女はまるで彼を通り抜けて見ているようだった。トレイには彼女が本当に彼を見ていないことがわかった。
彼女の目にはとても多くの痛みと悲しみが宿っていて、彼の心は張り裂けそうだった。そのアイコンタクトは数秒しか続かなかったが、時間が止まったように感じた。トレイはあの美しい目に溺れ、幸せな気持ちで死ねただろう。彼女がエレベーターに乗った後、彼は自分のトラックへ歩いた。
彼は早く決断を下さなければならなかった。人々が彼女を追い詰め、いつ攻撃してくるかわからない状況で、彼は落ち着いていられなかった。誰かがカテリーナを誘拐するほど近づくことを考えると、トレイはお腹を殴られたような気分になった。それが起こらないようにするのが彼の使命だった。彼は彼女の建物の前に停めてあった自分のトラックに乗り込み、彼女のバルコニーだとわかっている場所を見つめた。この数週間、彼女を自ら誘拐して誰にも見つからない場所に隠すことを何度も考えた。しかし、それは彼女の信頼を得る良い方法ではないと判断した。
トレイが彼女のアパートを観察し続けるうちに、あるアイデアが浮かび始めた。彼のチームは喜ばないだろうが、彼はそれを気にしなかった。カテリーナの安全だけが彼の関心事だった。
初めて彼女の写真を見た瞬間から、彼女には何か特別なものがあると感じていた。カテリーナは今や彼の心のすべての隙間を埋め尽くし、他の何も重要ではなくなっていた。彼は彼女の安全を確保するために必要なことは何でもするつもりだった。そして願わくは、彼らが最終的に出会ったとき、彼女も彼と同じつながりを感じてくれることを願った。
トレイのチームは、彼女の過去や彼女に何が起こったかを知るために彼女のケースファイルを読まなかったことで、彼が狂っていると思っていた。しかし彼にはそれができなかった。彼は自分の仕事をするために必要な事実だけを知っていた。彼の経験によれば、生存者たちは恥ずかしさと羞恥心から、しばしば重要な情報を供述から省略していた。最終的にカテリーナと二人きりになれたとき、彼は彼女の信頼を築き、彼女自身からすべてを語ってもらうつもりだった。彼女を守りながら彼女を恋に落とすという彼の裏の動機を、チームは知らなかった。
彼は駐車場を注視し始めた。彼女がすぐに病院へ向かうことを知っていたからだ。彼女はそこで看護師として夜勤をしていた。彼は何をするか決めていた。今すぐ行動に移すなら、彼は助けが必要だった。
トレイがチームで十分に信頼し、すぐに上司に言いつけないで助けてくれる人は一人しかいなかった。彼はすぐにエリーにメッセージを送り、彼のアパートまで迎えに来て、キウイの入った何かを持ってくるよう頼んだ。彼女もすぐに了解のメッセージと疑問符を返してきた。トレイはウインク絵文字だけで返信した。彼は単独行動に出るリスクを冒していたが、気にしなかった。計画ができたことで、ついにカテリーナと話せることに興奮を覚えた。
トレイは駐車場から出てくる黒いホンダ・シビックを見て、彼女を追った。病院の駐車場で彼女を連れ出せると思えば、そうするつもりだったが、それはリスクが高すぎるかもしれないと知っていた。自分が病院に入院して彼女の不意を突く方が良いだろう。
信号で停車中、彼は電話が振動するのを感じて見下ろした。上司からのメッセージで、彼らが監視していた男の一人がカテリーナの勤務する病院の救急外来に行ったことを知らせてきた。それだけで、彼は自分が正しい決断をしていることを確信した。行動を起こす時が来た。他の誰かが彼女を手に入れる前に。彼は今夜それをするつもりだった。結果など気にせずに。彼はカテリーナを守らなければならなかった。
彼女が病院に入るのを見届けた後、彼は自分のアパートへ向かい、エリーと会う準備をした。アトラスはトレイの頭の中で興奮して走り回っていた。トレイは彼女が人間であることをアトラスに思い出させなければならなかった。彼女を怖がらせないように、ゆっくり進める必要があった。もし彼女が彼のメイトなら、彼らは彼女に彼女が何も知らない世界を紹介することになるだろう。
彼は彼女がすべてを一度に受け入れるのは難しいかもしれないと理解していた。人々が彼女を追い詰めていることを知るだけでなく、彼女を守ろうとする人物が彼女のメイトであり、ウェアライオンであることも発見することになる。トレイは運転しながら頭を振った。もし自分がカテリーナだったら、どちらかが精神病院から脱走してきたと思うだろう。