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592話

刑務所にて。

セシリアはもう一言も言わずに立ち去ろうとした。

彼女はドミニクに言うべきことをすべて言い終えていた。

もはや何の執着もなかった。

これからは、ドミニクは彼女の人生から完全に消えるだろう。

彼女は思った。「人生で最も悲しいことは死ではなく、誰かの心から完全に消えてしまうことだ」

「セシリア、前世で俺はお前を愛していなかったのか?」ドミニクは彼女がドアに着いたとき、突然声をかけた。

セシリアの足が一瞬止まった。

前世でドミニクに苦しめられていたとき、彼女には理解できないことがあった。

しかし今は、ドミニクが彼女を愛していたかどうかなど、もはやセシリアには関係なかった...