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232話

「手を貸して」とダシエルが優しく呼びかけた。

セラフィナは唇を噛み、躊躇した。彼が自分の名前を呼んだとき、心が高鳴ったにもかかわらず、彼女は手を差し出したくなかった。彼に対する憎しみの方が強かったから。

二人は膠着状態にあった。

「杖をついているから、引き上げることができないんだ」とダシエルは説明した。

セラフィナは再び彼を見つめ、手を差し出した。心が和らいだからではなく、時間を無駄にして人目を引くことを避けるためだった。

ダシエルは安堵のため息をつき、不安を隠した。彼は優しく指輪を彼女の指に滑らせた。自分で彼女のサイズを推測して買ったその指輪は、完璧にフィットした。セラフィナは、彼...