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113話

ドミニクは赤ワインを何気なく一口飲みながら、セシリアがグラスを唇に運ぶ様子を見つめていた。

グラスの縁に触れる彼女の赤い唇は、艶やかで、ふくよかで、柔らかそうに見えた。

ドミニクはその瞬間、無意識のうちに唾を飲み込んだ。

彼はこれまでセシリアに心を動かされたことはなかった。彼女のことを、自分の思いのままに出入りする女性だと思い、情熱を掻き立てられることはないと考えていた。さらに、セシリアのような上流社会の教育に深く毒された女性は、ベッドでも堅苦しく反応がないだろうと信じていた。

しかし、なぜか今、セシリアを見つめているその瞬間、ドミニクの血が沸き立った。

彼は感情を抑えながら、ワイン...