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16話

タイラーはそれ以上何も言わず、ただ頷いて立ち去ろうとした。

「待って!」アーロンが突然声をかけた。「コンペティション委員会に伝えてくれ、決勝の審査員として名乗りを上げることを」

「承知しました、すぐに手配します」タイラーは内心で不満を漏らさずにはいられなかった。アーロンほど気まぐれな人に出会ったことがないと思った。

タイラーが去ると、アーロンは手元の書類を長い間ページをめくることなく見つめていた。なぜか、臆病なスザンナのことが頭から離れなかった。彼女のことを全く知らないような気がした。いらだちが彼を襲った。すぐさま電話を掴むとタイラーの番号を押した。「アボットさん、他に指示は?」というタ...