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80話

アゼルが怒った顔で私の前に立っているのが見えた。

彼はいつでも私たちの方に踏み込んで、私たちを引き離しそうな様子だった。私の心臓はすでに早鳴りしていて、周りの群衆は「キス」という言葉を肺の底から連呼していた。アゼルは怒りで鼻の穴を膨らませ、私たちの方へ大股で歩き始めた。皆の前で彼が騒ぎを起こすのも、ジェームズに私がキスされるのも嫌だった。私は大きなジレンマに陥っていた。ジェームズは私の困惑した顔を見た。

「心配するな、僕たちは友達だってわかってるよ」と彼はささやき、アゼルが私たちのところに来る前に私の頬にキスをして、私を下ろした。皆はまた私たちに歓声を送った。ジェームズは激怒するアゼルを見...