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10話

「アゼル」

その名前を口にした瞬間、私の目が開いた。私は信じられない思いで彼を見つめた。まさか彼の名前を喘いでしまったなんて。驚きの表情のまま彼に視線を落とすと、彼はベッドの端に肘をついて、手のひらに顎を乗せ、明らかに意味ありげな微笑みを浮かべていた。彼の見つめ方に、私の顔はさらに赤くなった。彼の茶色の瞳に見られたくなくて立ち上がろうとしたが、彼は私の手首を掴んで元の場所に座らせた。

私は彼を睨みつけたが、私の視線は彼に何の効果もなかった。代わりに彼は軟膏を取り、私の胸の下のあばら骨の傷に塗り始めた。私は下唇を噛み締め、声を出さないようにした。今度は彼の指が、先ほど彼の唇がしていたことと同...