ライカン王子の子犬

89話

キラン

「クリスタル——」ネイトがまた彼女の名前を呼んだ。彼が何度彼女の名前を呼んだか、もう数え切れなかった。私は手を上げて彼を止めた。

「言うことはそれだけだ」私は冷たく答えた。

彼女の唇から悲しげな笑いが漏れた。「へえ」彼女は少し目を上げた。「そんなに私のことが嫌いなの？私よりも狼人間を選ぶほどに？」

嫌い？

「いや」私は彼女をにらみつけながら言った。「嫌いという言葉では足りない。言葉では表せないほど軽蔑している——ずっとそうだった」

その最後の言葉に、彼女の表情が崩れた。ネイトもまた、視線を床に落とした。

実際には、私はいつも彼女を嫌っていたわけではない。かつては良い時間も...