ライカン王子の子犬

33話

ヴァイオレット…」

私は瞬きをして、周りを見回し、自分の名前を囁く男性の声を探した。すべてが曖昧で白く、どちらの方向に進むべきかわからなかった。

その声が再び私を呼んだ。「ヴァイオレット…」

今度は歩き始め、冷たい地面に素足が触れるのを感じた。あらゆる方向に身を回し、声の出どころを探そうとしたが…何も見つからない。私は夢の中に閉じ込められ、逃げ出すことができなかった。

そして、それを見つけた。

赤い目をした巨大な黒狼が私を見つめていた。その目は私の目を焼くように見つめ、私の心臓は胸の中で激しく鼓動し、足は固まって、逃げるべきか近づくべきか判断できなかった。

狼は動かなかった。ただ血...