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第二十二章

カイラン

ファーガス・ヘイスティングスを帰すわけにはいかない。

客室棟へと向かう廊下を大股で歩きながら、俺の頭の中はその一念で埋め尽くされていた。

絶対に帰らせるつもりはなかった。もし彼が帰ってしまったら、ヴァイオレットがどんな顔をするか、俺には耐えられなかったからだ。

彼女は期待なんてしていない、気にしていないといくらでも言えただろうが、あのろくでなしの男の話をするたびに、俺のヴァイオレットの声が震えるのが聞こえた。

彼女が言い訳をする姿が目に浮かぶ。守る価値もないような人間を、きっと守ろうとするだろうから。

だが、今回は違う。

あの男に限っては。

俺が許さないからだ。

今回の旅は...