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チャプター 219

ヴァイオレット

どうしてこうなったのか自分でもよく分からなかったが、いつの間にか私はケイデンの車椅子を押していた。

二人きりだった。彼の侍女の姿さえどこにも見当たらない。少なくとも護衛の一人くらいはいるだろうと思っていたのに、そんなことはなく、そのせいで不安は募るばかりだった。レナータ様は、どれだけケイデンを信頼しているのだろう。護衛もつけずに、彼に私を連れて行かせるなんて。

静まり返った廊下を進む間、私は彼の車椅子の背を強く握りしめすぎていた。手のひらには汗が滲んでいる。ケイデンがわずかに頭を後ろに傾けた。その口元に浮かんだ不敵な笑みの端が、ちょうど私から見える角度で。「無理やり連れてこ...