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第二十七章

カイラン

俺が通り過ぎると、数人の衛兵が頷いた。ネイトが今日、俺をどこへ引きずっていくつもりなのかは知らないが、俺の意識はそこにはなかった。

頭の中は、彼女のことでいっぱいだった。

俺のヴァイオレット……

彼女の名が頭から片時も離れず、また、離れてほしいとも思わなかった。いくら求めても足りない。彼女から離れてまだ数分しか経っていないというのに、もう俺の手にしっくりと収まる彼女の手の感触が恋しかった。

微笑むと和らぐその眼差し、俺が世界のすべてであるかのようにキスをするときの唇、背中を反らせ、俺の名を唯一知る言葉のように喘ぐときの、震えるまつ毛。信じてほしいが、昨夜は何度も彼女をそんな風にさ...