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チャプター 209

ヴァイオレット

ディランがテーブルの後ろに回り込み、トリニティが席を一つずれて彼を私たちの間に座らせたその間も、私の視線は王に釘付けだった。

彼女は正しかった。

彼は来たのだ。

でも、そのことをじっくり考える暇はなかった。

カイランは相変わらず私の隣に、体をこわばらせて立っている。彼の筋肉は微塵も緩んでいない。むしろ、王が少しでもおかしな動きをすれば、その瞬間にテーブルを飛び越えて襲いかかりそうな気配だった。

「さあ、ためらうな」エリクス王の声が、皆に聞こえるようにホールに響いた。その瞳は鋭く、冷たく、怒りに燃えている。「言いたいことがあるのだろう。申してみよ」

くそ、この男が心底憎い……。...