ライカン王子の子犬

チャプター 164

ヴァイオレット

もちろん、彼らがクリスタルを愛人として推しているのは分かっていた。

今となっては、ライペリア人がどんなものか、私にはある程度予想がついていた。だから、クリスタルのことも、他の愛人たちのことも、驚くには及ばなかった。

でも、彼女の名前を聞いて……それで全てが変わってしまった。

起こってしまったことは仕方ない、もう気にしていない、と何度も自分に言い聞かせようとした。でも、その名前が私に残した衝撃は、そうではないと告げていた。まだたくさんの痛みと怒りがあった。でも、恐怖だけは絶対に違う。もう、ない。

それでも、彼女がカイランの隣に立ち、何かしらの称号を得て、たとえそれが彼女...