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109話

彼が目をそらすと思っていたけど、そうはならなかった。彼は目を合わせたまま、少しも動じなかった。かすかに微笑んだけれど、その笑顔には何か、私の背筋を凍らせるものがあった。

その笑顔は私に向けられていた——彼はまっすぐに私を見つめていたのだ。

あんな人が…母は彼に何を望んでいたのだろう?

私たちの視線は、ガードの一人が彼の肩をたたいたことで遮られ、そして彼は姿を消した。

「殿下、アラリック王子がお待ちです」エリクスの護衛だと思われる一人が横から声をかけた。

エリクスは頷き、再び私の方へ歩み寄ってきた。

私は素早く状況を把握した。ライカンの王子でさえアラリックが待っていると告げられなけれ...