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231話

カシーは一瞬立ち止まった。彼の正体について尋ねるつもりだったが、彼がリチャードに秘密にするよう頼んでいたからには、明かしたくないのだろう。彼女は単に「ああ、別に理由はないわ」と言って、その話題を切り上げた。

ジョセフの視線が柔らかくなった。時間を確認して、カシーが口を開いた。「今夜オークションイベントがあるから、夕食は家で食べられないわ。一緒に...来てくれない?」彼女は恐る恐る尋ねた。彼が同意するとは思えなかった。彼のよく見せる冷ややかな態度は、そういった場には無関心そうに思えたから。

「いいよ」

「え?」カシーは驚いて、聞き間違えたのかと思った。

「意外だった?同意するとは」ジョセ...