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第1672話彼は少女を魅了した

「いい加減、私に愚痴るのはやめろ。こっちは五十を過ぎて一日十八時間働いているんだ。疲れたなんて口にしたこともないぞ」

カールは、デレクのその哀れっぽい態度にもう我慢ならなかった。

デレクは愛のためなら何でもするつもりだった。

まさかデレクがこれほどのロマンチストだったとは、今まで気づかなかった。

「いいわ、家を出たいなら、そうしなさい」

ヴァイオレットは引き止めなかった。結局のところ、ホワイトハウスでの長年の暮らしは、広くて安全である点を除けば、彼女自身もそれほど気に入ってはいなかったのだ。窮屈すぎるし、親戚が訪ねてくるにも不便で、出入りには毎回厳重なセキュリティチェックが必要だった。もし自分...