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160話

カシーは無力感を覚えた。「せめて見せてください」

「あなたは医者?傷の手当てができるの?」

彼の言葉に言い返せなかったが、彼のシャツの背中から血が滲み出ているのに気づき、パニックに陥った。「背中から血が出てる」

「黙っていろ」

カシーは黙り込み、必死に再度電話をかけて救急車の到着を急がせた。

幸いにも、3分後に救助が到着した。

救急隊員はすぐにジョセフのシャツを切り開き、あざと傷で覆われた背中を露わにした。カシーは愕然とした。

自分がその立場だったら、耐えられない痛みだっただろうと想像した。それなのに彼は一言も不平を漏らさず、彼女を安全な場所まで運んでくれたのだ。

この男は彼女...