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264話

トリシャ

吹雪の中、道路に沿って歩いていれば真っ直ぐに進めるし、迷って堂々巡りになることもないだろうと思っていた。でも、後ろで車が止まった時、その考えを改めた。

逃げるべきか、それとも相手と向き合うべきか迷う。武器は何も持っていないけど、歩き始めるのとほぼ同時に格闘訓練も始めていたし、二人の兄弟がいる家で育ったことで余計に強くなっていた。

でも、それは計算されたリスクだ。もし私を追ってきた相手がシフターなら、あるいは車の中に何人もいるなら、私はおしまいだ。

「まあいいか」と思って振り返る。

エンジンが切れ、私は緊張して唾を飲み込む。車の窓は濃く色付けされていて中が見えない。ドアが...