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254話

トリシャ

私は半夜もの間、天井を見つめていた。カーテンの隙間から漏れる月明かりが天井で踊るのを眺めながら。まだ狼を得ていないけれど、彼女がすでに落ち着かないのを感じる。

母の視点は理解できる。赤ん坊の時に誘拐された話を何千回も聞かされた。狂った女が私をさらい、運良く見つけられたという話を。

もう一度母を怖がらせたくはないけど、今回は違う。ただ、今の私はここに属している気がしないんだ。あの月明かりが何かを訴えかけてきて、城を出るように心の琴線を引っ張っている。

姉は私に行ってほしくないようだけど、少なくとも私が遠い場所からの呼びかけを聞いていることは理解しているみたい。眠りに落ちるた...