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172話

彼らがまだ部屋に入る前に、彼は突然立ち止まった。彼の視線はテーブルの上のバラに冷たく固定されていた。

「花は好きか?」と彼は尋ねた。

彼女の記憶の中で、彼は一度も彼女に花を贈ったことがなかった。

ハーパーは何と言えばいいのか考えられず、「誰からもらったかによるわね」とつぶやいた。

言った瞬間、自分の舌を噛み切りたくなった。

予想通り、フランシスの表情が暗くなった。

彼女は彼を挑発するつもりはなかった。ただ大学時代、ある男性が彼女の後をつけまわし、彼女のバックパックや教科書に赤いバラをこっそり入れていたことがあったのだ。

しばらくの間、彼女は本当に怖くなり、バラを嫌なものと関連付け...