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96: 君を覚えるために [R]

ザイオン視点

洞窟が天国のように感じられるなんて、考えたこともなかった。だが今、彼女の前に跪きながら、背後で起こっている惨たらしい出来事にもかかわらず、ここがどれほど天国であるかを実感したのだ。

俺たちの下の冷たい石と、膝に食い込む土の荒々しさは、どれほど贅沢を恋しがっているかの新たな証拠のように感じられるはずだったが、そうではなかった。

代わりに、俺は彼女に集中した。視線が絡み合った瞬間に彼女が息を呑む様や、暗い洞窟の中ですら輝いて見える彼女の肌に。

カーラがそばにいれば、どんなに寒くて居心地が悪くても関係なかった――俺はとろけてしまいそうだった。

彼女の唇は、何かを言おうとして...