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177話

ベイン視点

「お前、どこに行くつもりだ?」ザイオンの声が群衆の中に響き渡った。ちょうど俺がこっそりとその場から抜け出そうとしていた瞬間だった。

「くそっ」俺は息の下で呟き、かかとを回転させて彼の方を向いた。無理やり手をズボンのポケットに突っ込み、できるだけ平然を装いながら、唇に笑みを浮かべた。「キッチンに水を取りに行こうとしてたんだ。ここにはアルコールと割り物しかないから、そういうものは飲みたくなくてな」

ザイオンは疑わしげに眉を上げた。くそ、嘘をつくのが上手くならないとな。親友の彼は、俺のでたらめを何マイル離れていても嗅ぎ取れるんだろう。

「そうか」彼はその言葉を引き延ばし、...