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653話

パトリシアが救急室に到着すると、ケイレブがぼんやりと玄関に立ち、救急室の閉まったドアを見つめているのが見えた。ほんの短い時間で、彼は著しく年老いたように見えた。その姿は特に寂しげに映った。

パトリシアは心に痛みを感じ、足早に彼の側へと向かい、静かに声をかけた。「こんにちは」

ケイレブの意識はすべて救急室の中にあった。パトリシアの声を聞くまで、彼女が来たことに気づかなかった。彼女に向き直ると、絶望的な目に希望の光が灯った。

「やっと来てくれたんだね」彼は彼女の手をきつく握りしめ、切迫した様子で懇願した。「パトリシア、以前のことは全て私の過ちだった。見て見ぬふりをするべきじゃなかった!君が心...