7話
グラハムはホテルの部屋を歩き回っていた。一カ所に数分以上落ち着くことができず、すぐに落ち着きがなくなってしまう。
「女神の名にかけて、もう止めてくれ。神経衰弱になりそうだ」とローガンが不満を漏らした。グラハムはただイライラした視線を投げかけ、歩き続けた。
ホテルの部屋は広くて素敵だった。キングサイズのベッドと二つのソファ、テレビがある大きな部屋。壁の一つには小さな机が置かれていた。バスルームも広く、ウォークインシャワーと浴槽の両方が備わっていた。
このサミットの他のすべてのものと同様に、設備は彼の期待をはるかに超えていた。ローガンの部屋はやや小さいが、それでも高品質で、五人の戦士たちは二つの部屋を共有していた。四つの部屋はすべて隣り合わせだった。
グラハムはこれがどれだけベラの仕事なのか疑問に思った。彼女が参加者全員のホテルの手配を担当していたのだろうか？
「じっと座っていられないなら、せめて何か役に立つことをしろよ。バスティアンに電話して様子を確認するとかさ」とローガンはため息をつきながら言った。
それは悪くないアイデアだと、グラハムは思った。バスティアンは彼のベータで、グラハムの父親と共に、彼らがサミットに出席している間、パックの責任者だった。連絡を取って、メイトを見つけたことを伝えるべきだ。彼は携帯を取り出し、ベラとの会話を思い出しながら微笑んだ。
「もう楽しんでるみたいだな、ボス。俺たちのことを忘れてるんじゃないかと思い始めてたよ」バスティアンは電話に出るとそう言った。
「予想外の展開があってな」グラハムは言った。「父さんはそこにいるか？」
「ああ、スピーカーにするよ」
「やあ、息子よ、どうだ？」バスティアンがスピーカーにすると、グラハムは父の声を聞いた。
「それはこれから話す。まず、そっちはどうだ？放浪者の活動の兆候はあるか？」彼は尋ねた。
「いや、少なくともまだは。いつも通りだ。ミッカの子供がいつ生まれるか賭けを始めてるよ。予定日を三日過ぎてる」バスティアンが答えた。
「トーマスは気が気じゃないだろうな」グラハムはいとこと彼女のメイトのことを考えて笑った。
「ああ、もうすぐ発狂しそうだ」父親が笑った。「で、そっちはどうなんだ？何か起きてるのか？少し緊張してるように聞こえるぞ」
「無事に到着した。歓迎と手配は期待以上だ」グラハムが言い始めると、ローガンが大笑いした。
「それはローガンが笑ってるのか？」バスティアンが尋ねた。
「ああ、気にするな。大きなニュースは、俺がメイトを見つけたことだ。サミットの終わりには彼女を連れて帰る」
「息子よ、おめでとう。ついにルナを見つけたか」父親が言った。
「おめでとう、ボス。彼女のために万全の準備をしておくよ」バスティアンは興奮した様子だった。
「バスティアン、シャーロットを俺の部屋に近づけるな」グラハムは警告した。彼の妹がメイトを連れて帰ることを知れば、アパートをもっと女性らしく飾りたがるだろうことは分かっていた。家に帰ってピンクの花が爆発したような部屋になるのは避けたかった。
「最善を尽くすよ、ボス。でも彼女のことだから分かるだろ」
「彼女はお前のメイトだ。抑えておけよ。もし誰かが部屋を改装するとしたら、それはベラだ」グラハムは言った。
「ルナ・ベラ、いい響きだな」父親は満足そうに言った。グラハムも同意した。
「彼女のことを教えてくれ」父親が言った。グラハムは知っている限りのことを話した。また、なぜ今彼女と一緒にいないのかも説明した。
「お前は幸運な狼だ、息子よ。数百万ドル規模の企業を組織し、アルファペアと密接に働いてきたオメガとつがうとは。これ以上望めないだろう」父親は述べた。
「その通りだ」グラハムは微笑みながら認めた。
「それで緊張してるように聞こえる理由も分かった。もうすぐ営業時間終了だから、彼女からすぐに電話があるといいな。経過を知らせてくれよ」
グラハムは時間を確認して、ほとんどパニックになりそうだった。ベラからの電話を逃したくなかった。
「分かった。俺たちがいない間、そっちを頼む。何か問題があったり、変だと感じたりしたら知らせてくれ」彼は早く電話を切りたくて言った。「それとバスティアン、シャーロットを俺のアパートに近づけるな。さもないと古いパンと水だけで一週間、独房で過ごすことになるぞ」
「はい、アルファ」
「気をつけろよ、息子」
グラハムは通話を終え、また歩き回り始めた。
「喜んでたみたいだな？」ローガンが言った。
「ああ」グラハムは彼を見て確認した。ローガンは彼らが受け取ったセキュリティフォルダを読んでいた。
「何か心配すべきことはあるか？」グラハムは、本当の興味からというより、10秒ごとに携帯を見ることから気をそらすために尋ねた。
「いや、彼らは何をしているか分かっているようだ。これはルナ・ベラがまとめたものだよな？」ローガンが尋ねた。
「そう言われた」グラハムは確認した。ローガンは口笛を吹いた。
「これは印象的だ」彼はそう言い、グラハムから疑問の視線を浴びた。「読んでないのか？」
「他のことで頭がいっぱいだった」グラハムは言った。
「見てみろ、何が言いたいか分かるから」
グラハムは自分のフォルダのコピーを手に取り、読み始めた。ローガンが何を言いたいのか理解できた。情報は包括的で詳細、読みやすく理解しやすいように整理されていた。もしベラ、彼のメイトがこれをまとめたと言われていなければ、ガンマかベータが作ったものだと思っただろう。このようなものをまとめるのに必要なセキュリティと計画の理解は、オメガには期待していなかったものだった。
「彼女はすごいな」それは彼の側からの言明だった。
「素晴らしいルナを迎えることになりそうだ」ローガンは同意した。
グラハムの携帯が鳴り、画面にメイトの名前が表示されると彼は微笑んだ。
「やあ」彼は言った。
「やあ」ベラが言った、グラハムは彼女の笑顔が聞こえた。「あと10分ほどで出発できるわ」彼女は言った。
「今すぐ出るよ、待っていて」彼は言った。
「徒歩で来られると思う？」彼女は尋ねた。彼の本能は、そんな馬鹿げた質問にイライラしそうになったが、自分がそれほど確信がないことに気づくまでだった。
「できると思う」彼は彼女に言った。
「そのほうが早いわ。この時間の街の交通は信じられないほど混んでるの。もっと早く電話すればよかったわね。ごめんなさい」彼女は言った。
「いや、大丈夫だよ。歩いていくよ。気にしないで。そのまま待っていて」
「分かったわ。じゃあすぐに会いましょう」
「すぐに会おう」
彼は通話を終え、携帯のGPSにHEIの本社を入力した。
「出かけるよ。いつ戻るか分からないが、一時間後に連絡する」彼はローガンに言った。ローガンは自分の部屋に戻るために立ち上がった。
「楽しんできてくれ。ルナによろしく伝えてくれ」彼はグラハムに言った。