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219話

カイデン視点

式場は完全な混乱状態に陥った—悲鳴、パニックに陥った足音、必死に逃げ出そうとする人々がぶつかり合う。逃げ惑う客たちの姿でほとんど見えないが、彼らの顔は青ざめ、恐怖に満ちている。だが私が気にかけているのは、逃げ出した運命の相手だけだ。

また彼女は私の指の間からすり抜け、この狂気の中に消えてしまった。今、私を前に進ませているのは怒り—純粋で、生々しく、目も眩むような怒りだけだ。

パニックに陥った群衆を押しのけながら、私は目で一つ一つの影、彼女が一時的な逃げ場に使えそうな暗い隅を探すが、彼女の姿はどこにもない。まるで空気の中に消えたかのように、いなくなってしまった。

「アシュリ...