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76話

バルタザールは寝室の真ん中に立ち、メアリーを目で追っていた。彼女はスーツケースに荷物を詰めていて、彼にはそれを止める権利がなかった。メアリーが最後の数点を鞄に入れると、彼の顔にあった眉間のしわがさらに深くなった。

「これで全部ね」メアリーは小さく呟いた。

「行かなきゃならないのか?俺をここに残して、神のみぞ知る何かをさせるつもりなのか?愛しい人、俺は自分を信用していない、君もそうすべきじゃない」バルタザールは泣き言を言った。メアリーは何度か黙るように命じていた。彼はしばらく大人しくしていたが、またすぐに作り笑いを始めるのだった。

「ええ、行かなきゃ。バルタザール、私の友人が助けを必要とし...